AGRIST株式会社様 【開発責任者インタビュー】ピーマンの自動収穫機を開発。精度の高いAIカメラを実現するために必要だったのは…
「AI農業」で世界を変える――。
創業から5年、AGRIST株式会社が急成長を遂げる背景には、自社内で開発する「自動収穫機」の姿が。
株式会社AGRISTの事業概要について教えていただいてもよろしいでしょうか。
農業用の自動収穫ロボットを開発しています。当社の問題意識として、高齢化が進む農家・農業を支えたいという思いがあります。農業に従事している主力層の平均年齢は70歳近く、収穫などのアルバイトを募集しても、いらっしゃる方の多くが70歳80歳台です。このままでは、10年後に農業従事者が誰もいなくなってしまう、そんな危機感をもとに今のビジネスを立ち上げました。
株式会社AGRISTの長田様
農業人口の高齢化は日本社会の大きな課題ですよね。そこで、創業と。
はい。創業時の話ですが、当時宮崎にいらっしゃった若手ピーマン農家の方々が、講師を呼んで月1の勉強会をしていたんです。そこに創業者の齋藤が参加しました。話を伺っていると、問題は「収穫」なんですよ。農家の方の高い技術で、ピーマンはたくさん育つんです。でも、収穫をする人がいないのでお金にならない、というかお金にできない。で、そのまま大きくなりすぎて商品にならなくなったり、赤くなって落ちてしまうという、機会損失が起きていました。まずできることを、と「ピーマンロボット」に行きつきました。よく「なんでピーマンを選んだんですか」って聞かれますが、逆で、ピーマンは決まっていて、一番の困りごとの収穫をするロボットを作るかと(笑)。
ありがとうございます。ピーマンは創業地である新富町(宮崎県)の主たる農作物なんですよね。
そうですね。茨城県と宮崎県で出荷量の1,2位を占めています。
我々が開発している自動収穫機の大きな特徴として「吊り下げ式」であることが挙げられます。ビニールハウス内にワイヤーを張り、そのワイヤーの上をロボットが吊り下げられて移動していきます。地面の上や畝の間は、水や温風が通っていたり、土でデコボコしていたり、ぬかるんでいたりとコンディションが悪い。様々なアイデアを農家さんからいただいて、今のワイヤーで吊って空中を移動するシステムに落ち着きました。
おお。感動的…!このアームで収穫するんですか?
はい。我々は「収穫ハンド」と呼んでいますが、こちらで刈り取ります。
ロボットの手元についているカメラが、遠くからピーマンの「位置」と「大きさ」を認識してアプローチします。ここで貴社にアノテーションをお願いした学習データを元に適正な判断をして、「切れる」と判断すればピーマンを取りに行くという算段です。①取れるピーマン、②枝が刈り取りの邪魔しているピーマン、③葉っぱに隠れているピーマン、④大きさが適正でないもの、⑤その他の例外、に分けて、OKが出たものだけ収穫、NGが出たピーマンは収穫に行きません。
大量にある画像の分類をどう処理するか、そこで「harBest」が活きる。
開発当初は課題も多かったのでは?
大変でした(笑)。まずロボットがピーマンを刈り取れませんでしたね。ちょうど2022年の3月頃でしょうか、それまであまり取れなかったんですよ。ロボットが近づくものの、オシイ!みたいな。しかも取る直前で止まっていたり・・・。そもそも緑色のピーマン畑の中から緑色のピーマンを見つけるという行為が大変なんです。それが出来るようになっても収穫精度が出なくて。
工夫して一応ピーマンを採れるようにはなったんです。しかし次に、周囲の枝「も」切ってしまうようになりました。ピーマンは所構わず実がつきますので、枝の近くに実がなるピーマンを切る際に、枝まで切ってしまうんですね。失敗して枝を切ってしまうと、その後に成るはずのピーマンの分の期待収益が全部なくなってしまいます。
確かに、大損害ですね。
本当にそうなんです。1回の失敗がすごく大きい。そこで、貴社の局所的な情報のアノテーションデータを使ったところ精度が改善して今に至ります。
弊社を知っていただいたきっかけは何でしたか?
知り合いの会社から紹介していただきました。「クラウドワーカーでアノテーション」というのが面白そうだなと思って。期待値は未知数でしたが、データの品質管理もしていただけるとお聞きしたので、是非やってみようと思いお願いしました。
実際にご利用いただいていかがでしたか?
正直、私たちの想定よりもかなり品質の高いデータを納品していただきました。また、作業自体スピーディだったことも良かったです。貴社と度々ミーティングしながら試行錯誤してマニュアルを作ったあの時間は、今思うと良い思い出ですね(笑)。
確かに、あれは苦労しましたね。
我々の農作物にかかわる用語は一般的でないのもあって、「果柄」など聞きなれないものも少なくないので、「アノテーションマニュアルをワーカーさんにどううまく伝えていくか」って話なのかなと思います。
フィードバックいただき、ありがとうございます。我々もプロダクトをより使いやすくできるように、開発を進めていきたいと思います。最後に、今後の目標などがあれば教えてください。
今、きゅうりの収穫ロボット開発に着手しています。ただ、やってみてわかりましたが、なんでもできるどんな作物でも収穫できる汎用ロボットって途轍もなく難しくって、ちょっと対象が変わると使えない。ピーマンが取れるなら、ナスも取れますかっていうと、そんなことはない、それは全然別の話になる。ただ、もうちょっとしたらピーマンロボットが完成します。そのまま別の作物に使うわけにはいきませんけども、しばらくお時間をいただければピーマンロボット開発のKnow-Howを活用して、短い時間で作物の種類を広げていけるのではないかと思ってます。
長田さん、お忙しい中ありがとうございました!
harBestは今後も農業課題解決に貢献できるよう、日々アップデートを重ねていきます!
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