RevComm株式会社様 【開発責任者インタビュー】音声解析AI搭載クラウドIP電話「MiiTel」の精度を「harBest」でぐっと押し上げる。
精度の高い音声認識AIの土台には、精度の高い教師データが。地道なデータ作成はどのようにして行われているのか。
早速ですが、御社の事業概要についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
はい。僕らは「コミュニケーションを再発明し、人が人を想う社会を作る」をミッションに掲げていて、提供しているのは「MiiTel(ミーテル)」という音声解析AI搭載型のIP電話サービスです。IP電話サービスは、パソコンやスマホアプリを使って、電話番号をプッシュしたら相手と通話できます。MiiTelは機器ではなくソフトウェアなので、コンピューターがあればすぐに電話ができます。なので、電話機が必要なく、固定費を抑えられるというメリットからインサイドセールスやコールセンターのような、企業が電話を必要とするような部署に多数導入いただいております。
特徴的なのは、通話内容が全て音声データとしてクラウドに保存される点です。そのデータを、僕らのAIを使って可視化したり、話者のパフォーマンス、トークの上手下手、ほかにも話す速度だったりとか、抑揚の付け方、話しているキーワードやキーワードの含まれ方を数値化したり見える化して、今後のコール改善に活かしていく、といったところが僕らのサービスのユニークな点です。あと、今電話のお話をしたんですが、ZoomやGoogle Meet、Teams等と連携して、オンライン会議も解析可能です。会議内容やプレゼンテーションの仕方など、そういった場面でも解析ができます。
ユーザー数も5万人を突破して、今年「Forbes AI 50」世界のAIカンパニー50社のなかの1社に選ばれました。
橋本さんはどのようなキャリアを歩まれてきたんですか?
私は今株式会社RevCommの執行役員で、リサーチディレクターに就いています。1993年に東工大に入学、修士・博士に進学して2002年に卒業。その後、研究室の助手から特任准教授となり、東工大で10年ぐらい教員として働いていました。2012年に産業関係に移りまして、GREEに入り、2年後にLINE、今のRevCommへと至ります。自然言語処理が専門分野で、わかりやすく言うと「ChatGPT」の世界です。テキストでやり取りするなど、人間との対話領域が私のバックグラウンドになります。
MiiTelの実際の画面を見せていただくことはできますか。
こちらがその画面です。誰が、いつ、どこに、何回電話したのか記録がとれて、個々の電話の内容が表示されます。沈黙の回数や87:13というように発話の割合も確認できます。サッカーで言うと、ボールの支配率ですね。いいコミュニケーションというのは、大体これが50:50になります。相手との関係性や業界によって多少変わるものの、お互いがちゃんと同じ量だけ話す。87%まで話しているとする=押しつけがましい感じになってるのかなと。
この事例に関しては、お客様からクレームが来て、それに対して説明しているので、声感情認識の結果は非常にネガティブなところが大きい。要はお客様がクレームの内容を話して、それに対してフォローしてるって感じなんで、営業担当側が話す量が多くなってしまう。
ネガティブな反応というのは声色なんですか、内容なんですか。
僕らの音声感情認識エンジンは音声と言語の両方の特徴を使っています。実際に怒っているときは、たとえば声が大きくなったりとか早口になったりとか、そういった特徴を機械学習で捉えています。あとはテキスト情報も同時に捉えているので、ネガティブなワードなんかも学習して感情を推定しています。完全にディープラーニングの世界なので、明確に「これがこういうふうな組み合わせで」っていう説明をするのは、なかなか難しいですけど…。
コロナ禍の影響でサービスが普及したといった背景はありますか。
ありますね。僕らのサービスはいわゆる電話サービスなんですが、固定電話が必要ないんです。電話営業の担当者はオフィスに集まって仕事をしています。オフィスにすごい数のそれぞれの電話機があって、それで電話をかけるんですけど、コロナだと、出社できないじゃないですか。
電話機を家に持って帰っても会社の電話番号で電話できないし、仕事できなくなっちゃう。だけど、僕らのサービスはインターネット網を利用した電話サービスなので、パソコンがあればいいんです。僕らのサービスを通じて電話をかけていただければ、どこに居ようと会社の代表電話を使って電話業務ができるということと、パソコンさえあればいいので、専用のデバイスは必要なく、本当に在宅でやれるっていうところが大きいです。コロナでかなり伸びたのはありますね。
今回、harBestを使用していただいたプロジェクトはどのような内容なのですか。
音声データから何を話してるかっていうのをテキスト化する、話してる内容をテキストに書き起こす作業をAIにやらせているんですね。事前にAIに学習させる音声データと、対になるテキストデータが必要になっているわけです。こうしたデータ作成をお願いしています。
harBest利用の背景、当時の課題感をお伺いしてもよろしいでしょうか。
課題としては、AIを学習させるために大量のデータがやっぱり必要で、音声を聞いてテキスト化するって、大変じゃないですか。しかも一定のデータ量を集めるというのはすごく苦労するんです。そこはharBestで効率よく、短期間でデータが作れてすごくありがたいなと。
harBest利用以前は社内でやられていたんですか。
そうですね。社内のツールを使って書き起こしてたんですけど、やっぱりすごく大変だし、人を集めるのにも苦労したし、結局マネジメントもしなきゃいけない。AIとして進化させるためにデータが必要で、データが足りないとAIがなかなか良くなっていかないという、開発者のジレンマを解消していただきました。
良かったです。harBestに外注するにあたって、社内で続けてた場合とどのぐらいの差がありますか。
いや、めちゃくちゃあると思いますよ。月々で書き起こしてる量でいうと、当時5分の1ぐらいしか書き起こせてなかったんで、それでいうと5倍ぐらいのスピードで月々納品いただいてますからね。
ありがとうございます。harBestを利用していただいたきっかけを教えてください。
出会いは「顔画像データ3000枚無料配布」のニュースを見て、ダウンロードさせていただいたんですよ。クオリティを見てみたら、非常に良いデータを作ってるなと。ちょうどそのタイミングで、先ほどの課題に当たっていて、データを作るもスピード遅いし、データがないと性能としては上がっていかないのでどうしようか、外注したい、思っていたときに、たまたま打ち合わせをする機会をいただきました。
比較検討されたと思いますが、決め手はなんだったのでしょうか。
一番クオリティが安定してたし、あとコストも安かったので、トータルバランスで選ばせていただきました。
現在も利用いただいている中で、その感想だったり、ここがいいなとか改善してほしいみたいなところはありますか。
納品していただいているデータの質は安定しています。改善してほしいところは特にないですね。受け取ってチェックはしますけど、そのままでOKって感じです。作業効率もお互いに上がってますし。
ありがとうございます! 御社の今後のビジョンについてお聞かせいただけますでしょうか。
会議で「盛り上がってるいポイントはどこか」とか、その辺がキャッチできるといいかなと思っています。この商談がうまくいくのかいかないのか予測してほしい、といったニーズは耳にしますね。最終的には、音声の内容が、経営判断するための知識やデータとして活用できる状況を作りたいですね。最終的に「経営判断AI」のような経営に使えるインサイトを拾えるようにすることを今は目指しています。
とても価値のあるサービスを作られていて、我々もサポートさせていただけていることが非常に嬉しく思えます。本日は貴重なお時間をありがとうございました。
文:狩野洋一
取材:2023年8月 ※掲載内容は取材当時のものです。
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