マイクロコントロールシステムズ株式会社様 AI開発で工場の「見える化」に挑戦。製造業界全体を盛り上げるAI開発に着手。
教師データの精度に課題が山積み。属人化したアノテーションから脱却するために「harBest」はどう活きる?
早速ですが、事業概要を教えてください。
マイクロコントロールシステムズは、電子部品、基板の実装および製造業の強みを生かした自社製品の開発を行っています。自社製品としては大手工作機械メーカーのLED照明、大手カーシェアリングサービスへタイマ付きルームランプの提供などがあり、事業構成は受託での電子基盤作成、自社製品の販売と半々となります。
貴社の所在地は長野にありますよね。弊社は都内にありますが、コミュニケーションはスムーズでしたか?
基本はWEB会議でコミュニケーションをしていました。導入前に今後の展開を相談したく、長野の工場に来ていただき対面で打ち合わせなど柔軟に対応していただきました。
尾崎さんのキャリアを教えてください。
前職は松下電送(現:パナソニックHD)で、デジタル複合機の開発に携わっていました。定年までおりまして、現職に移り今6年目となります。今回のプロジェクトは社内から2名。社外から2名の計4名のプロジェクトです。
それでは具体的な利用の背景・課題について伺わせてください。
製品を作る設備そのものが、1台1000万円以上するような高額な機械を使用しています。高額なので、導入したらできる限り動かしたいじゃないですか。なので現場からも、経営陣からも、何とか「稼働率を見える化できないか」「最適化できないか」と課題が挙がっていました。
ご存じかわかりませんが、工場系の設備には3色にピカピカ光るランプ「シグナルライト」が付いています。それが赤く光ったり青く光ることで、可動状況を示します。そこをカメラで捉え、ディープラーニングで学習をさせ、「この装置はどのくらいの稼働をしているか」を可視化するシステムを開発しました。
今までは、システムではなく人が観測されていたのでしょうか?
長年携わっている人の勘だよりでした。1日中人が見ているわけにはいかないので、「誰かが作業をしているので動いていそう」といった定性的・感覚的な判断でした。新しい機械はパソコンを使用し稼働率の判断ができるものの、古い機械はそれができません。一挙に同等の稼働率を見るためには、シグナルライトをカメラで定期的に撮影を行い、認識をさせ稼働率を算出するのが良い方法と考えました。
今回の「AIカメラで稼働率を算出する」というのは尾崎さんのアイデアですか?
はい・他のメーカーにも何社かあると耳にしたことがあります。シグナルライトに無線を飛ばす装置を付けたり他にも色々な方法があります。しかし、外部から購入をするとコストがかかり、自社仕様にカスタマイズするのも限界があります。その後の展開も視野に入れて自社で内製化することにしました。
ディープラーニングには大量の学習データを必要とします。自社社員でアノテーション作業を地道に行っていました。しかし、成果が出ず実施するたびに精度が落ちていく状況でした。
成果が出ないのはどういった理由からだと思われていましたか?
やり方の問題だったと思います。領域の切り出し方や、社内でのアノテーション時には1名体制で細部の判断が属人化してしまい精度に繋がらなかったと考えています。
harBestとの出会いについて伺わせてください。
当時アノテーションを専門で対応しているサービスが少なく、大量に発注しないと引き受けてくれない会社も多かったんです。harBestはその点、自由度が非常に高く枚数の制限がありませんでした。少量から始められたのも良かったです。トライアルもあったので結果を見てから、本格的にプロジェクトを進めることができました。そして、価格が圧倒的に安かったです。
社内でのアノテーション時との精度の差は、どのように感じられてますか?
データで数値が出ています。15%~程度認識率の精度が上がりました。評価後に数値化を行うので一目瞭然でした。中でも、特定のシグナルライトの光り方の認識率が悪く、ここは20~30%もアップし、非常に効果がありました。
harBestの複数人でのアノテーション作業・多数のクラウドワーカーといった色々な目が入ることにより、精度の高い学習データとなったということでしょうか?
はい、そうだと思います。私たちが感じた少人数作業は、曖昧な状況など個人の主観でラベリングするため、偏りが生じるようです。その点、1つのデータを複数人でアノテーションし、多数決×最適化を行うharBestは合理的でしたね。社内で複数人を動かすリソースはないので、アウトソーシングしてよかったと思っています。
認識率が向上したとのことでしたが、納品データはAI開発に十分な仕上がりでしたか。感想をお伺いできればと思います
十分な仕上がりでした。お互いに認識の齟齬が発生した際にもすぐ、営業担当の方がWeb会議などスムーズにコミュニケーションを取れる体制を整えられていたため、正しい要望について議論をすることが出来ました。その結果、スピーディな修正対応で問題ありませんでした。
納品データを実装されて社内で何か目に見える効果はありますか?
はい。「マウンター」という電子基板に部品を乗せていく装置の稼働率が社内認識より低いことが見えました。そのように各システムの見える化を実現できたことで、工場全体の製造率が上がってきています。
社内のDX化に繋がっているのでしょうか?
こちらは実際に弊社のFAVs(Factory Activity Visualize Service)といった工場の見える化を行うWebサーバーです。当社が立ち上げているGoogleCloudを使用したクラウドサービスです。(※現在は自社のみ)
このように、可視化したことによって作業担当者が気付くようになりました。
こちらはAIで判定したシグナルライトの認識データですか?
納品頂いた学習データをシステムに取り込み、AIがエッジコンピュータでシグナルライトの色を認識します。その後、サーバーに送りサーバー側で認識した色を可視化して、Web上に表示したものです。
使用されている方はどのように感じられていますか。社内での反応について伺わせてください
とても反応がよかったです。今回のプロジェクト後に社内アンケートを取りました。口頭で伝え合うより、作業者が視覚的に確認できる点が分かりやすいと好評でした。「まずい、こんなに稼働率が良くなかったんだ」という点に気付くことも出来たといった声も多くありました。製造工程のどこに課題点があるかを、ビジュアル化することで誰が見ても理解し、社内全体で課題の共有ができました。非常に効果があったと感じています。
ありがとうございます。今後の活用予定について伺わせてください。
社内でシステムを運用し、問題があった特定のシグナルライトの認識率の低さを改善することができました。現在は認識率が90%以上にも上がり、問題がないことを検証することができました。今後はこの仕組みを外販していきたいと考えています。しかし、非常にハードルが高く、どのような形でアプローチし製品として提供するかを検討しているフェーズです。プロジェクトが決まり次第、今後は導入工場特有のアノテーションを、これからもAPTOにお願いしていく予定です。
新規で工場に導入する際、必要な画像の枚数はどのくらいですか?
数千枚あれば十分かと思います。基本は1日の間に日が昇り沈むまで、光の加減に変化があります。可能であれば季節によってのデータも欲しいところです。工場によって状況が異なるためそれぞれの環境に合わせて必要な枚数の調整が必要だと考えられます。
それでは最後に貴社の今後のビジョンをお伺いできればと思います。
我々は製造業で自社工場があります。そのため、実験場であるシステムフィールドがあり、自分たちで実験を行いニーズがあるものを作り出すことができます。それをお客様に提供できることが強みだと思っています。「製造業にまつわるDXをソリューションとして提供する」といった製造のみならず、DX推進事業を一つの柱として成長していきたいと考えています。
harBestも製造業界全体を盛り上げられるように、日々サービス向上に努めて参ります。本日はお時間をいただきありがとうございました!
◼︎マイクロコントロールシステムズ(株)
https://mail.google.com/mail/u/0/#all/FMfcgzGwHfspLtNDmfdpmFmscLRWKqzj
文:狩野洋一
取材日:2023年7月 ※掲載内容は取材当時のものです。
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