【AI×教育】AIが日本の教育をアップグレードさせる未来を考えてみた【夢物語シリーズ第2弾】
日常的に耳にするようになった生成AI。大手IT企業や生成AIスタートアップが凌ぎを削り、日々進化を遂げています。最近では、AI向けの半導体を製造している企業エヌビディアの躍進により、大手IT企業の時価総額ランキングで経済・ITニュースが盛り上がりを見せています。
そのような中であっても、AIの使い方は、企業においては効率化やDX(デジタル・トランスメーション)推進、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング:業務改革)推進の文脈で語られることが多いです。そして最近では生成AIの発展が著しく、多くの企業で導入が検討されています。しかしそれにおいても、業務効率化という観点で語られることが多いのが実情です。 このコラムシリーズではAIの活用に頭を悩ませている方々のために、夢想しながら楽しんで読んでもらいつつ、業務効率化の文脈に終始せず、あえて夢のようなことを実現できないかを考えたり、日常生活の中でここにAIがあったらどれだけ便利なのかと夢想したものを綴ります。
ビジネスの世界では、「夢物語で終わらせないようにするには」ということが求められますが、その問いが出てくるということがすなわち、夢物語がなければ新しい事業も生まれません。
このシリーズで紹介する事例がすでにどこかで実現している技術であれば申し訳ございません。AIの進化は日々加速度的に進化しているので、このコラムで書いたことがすでに実現しているかもしれません。AIの可能性を知ることで、様々なビジネスや業務の参考にしていただけますと幸いです。
本コラム第2弾は「AI×教育」をテーマに考えていきます。(第1弾は様々な業界で使われる生成AIをテーマとしています。こちらからぜひご覧ください。)
目次
教育業界でAIが注目される理由
省庁が取り組みを推進
2019年12月に文部科学省がGIGAスクール構想(Global and Innovation Gateway for All)を発表し、取り組みが進められてきました。
これまでの日本の教育実践と最先端のICTのベストミックスを図ることで、教師・児童生徒の力を最大限に発揮できるようになることを目的とし、小学校・中学校・特別支援学校にて一人一台コンピュータを実現するだけでなく、希望する小学校~高等学校、特別支援学校へ校内通信ネットワークの整備を支援する2本の柱で構成されています。
2020年に突如として全世界を襲ったコロナ禍を経て、この取り組みが加速し、当初5年で計画されていたものは2023年度中に整備目標が達成されました。
そして、現在使用されている学習者端末が劣化し使用できなくなってしまうのを防ぐために、2023年度補正予算では、「GIGAスクール構想 ~1人1台端末の着実な更新~」(『令和5年度文部科学省補正予算 事業別資料集』より)
として、都道府県に基金を造成、2025年までの更新分に必要な経費を計上しました。このように、社会から大きく遅れていた学校現場でのICT環境の整備を大きく進展させ、ICT活用が日常的となりました。
さらに、2023年7月には『初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン』が示され、現時点では「限定的な利用から始めることが適切」とされていますが、生成AIの活用に否定的な国も多いなか、日本では好意的に生成AIを活用していくようなガイドラインがまとめられました。
このように、ICT環境がハード面・ソフト面の両側面で整ったことにより、AIなど先端技術の利活用が進められる基礎が固められ、行政も今後のAIの活用方法に注目していると言えるでしょう。
教師不足
教師の劣悪な労働環境やそれに伴う教師の成り手不足、精神疾患による病気休職者・離職者増加が長く問題視されていた中、文部科学省は2022年1月に初めて『「教師不足」に関する実態調査』を行いました。
その調査では、2021年5月時点で公立小中学校の約20校に1校(約5%)で教師が不足していることを明らかにしました。特に特別支援学校では約10校に1校(11.0%)となっており、深刻な教師不足に陥っています。また、それに伴い、小学校の学級担任を正規職員だけでは充足できなくなっているため、非正規教員(正確には臨時的任用教員)が小学校の担任となっている比率は11.49%、特別支援学級の学級担任は23.69%となっており、このような状態にある学校では、学校運営組織の円滑化を図るべき主幹教諭が代替しているなど、学校の機能が低下していると考えられます。
実際に、人口規模が小さい市町村では、外国人児童など学習言語として日本語を使用することが難しい生徒への補助的教育である、いわゆる「取り出し授業」が行えないために、生徒自身では学校の授業の理解が進まず、放置状態となってしまうケースが少なくありません。それにより、生活に必要な言語を習得できず、社会からも置き去りとなってしまう負の連鎖が起きてしまいます。
教師不足対策のため、行政では、教員採用試験の早期化・複線化 、「地域教員希望枠」の新設、小学校教員の免許を最短2年で取得できる教職課程を拡大、さらに最近では教職大学院を修了して正規職員に採用された人を対象に、在学中の奨学金返済を全額免除する方針が出されました。
制度面の補助だけではなく、AIを活用することで、教師の業務をサポートする協働教育という考え方も出てきています。これにより、AIが得意な部分はAIに任せ、教師にしかできない仕事は教師が行うことで、業務の負担が減少して職場環境が改善、結果的に教員志望者を増やすことができるなど、AIが教育現場の問題を解決する手段になりうると考えられます。
学習者に合わせたカスタマイズ
従来、学校では平均的な学習レベルに合わせて教員が授業を進めていくため、習得できていない生徒がついていけなくなってしまい、どんどん学習が遅れてしまうという状況でした。それを補うために多額の料金を支払って塾に通う生徒は追いつくことができますが、補助的な学習環境がない場合は、カバーができずにわからないまま学年が上がってしまいさらに勉強についていけなくなってしまいます。
学習者がAIを利用することで、学習者のレベルや得意・不得意を学習し、一人一人の理解度に応じた教育を行うことができます。
夢物語1:事務作業を終わらせてくれる教員の味方AI
授業をするための前準備、宿題の丸付けも
先生は授業をするだけが仕事、ではありません。授業の前には授業で扱う内容をどうやったら全員に理解してもらえるかを考え、そのために資料を準備し、授業後には膨大な数の宿題に〇付けを行い、コメントを入れるなど、授業に関わる仕事だけでも膨大な仕事量です。
教員の最大の敵は事務作業
先生は学級通信を作成したり、年に数回は家族の方と三者面談、行事のための準備をしたり、PTAの会計事務、と授業以外の業務もたくさんあります。それだけでなく、生徒の作品を添削した後の教室での掲示、膨大なメールチェック、他のクラスとの授業進捗のすり合わせ、保護者に依頼していた情報のとりまとめ(未提出の場合はずっと追いかけ)、配布するプリントを作成して人数分印刷をする等、毎日細かい作業も多いです。
授業を教える、生徒と関わるのは好きでこの仕事を選んだのに、なぜこんなことまでやらなくてはならないのだろう、教育に関わる業務だけでも手一杯と考えている教員は多いでしょう。
付随する業務が多すぎて新しい授業の取り組みをしたくても手が回らず、結局前年と同じように指導要綱に記載されていることだけを授業で淡々と進めるという悪循環が生まれてしまいかねません。
学期終わりに成績表を自動作成
学期末はイベントが重なり、その準備で時間が取られてしまうだけでなく、生徒の成績表の集計をしたり、コメントを入れたりするのも大変です。
問題演習やテストの際のデジタルデータを集積しておくことで、これまでのテストや結果からすぐに成績表を作成することができれば、大幅に集計の時間を短縮することができます。関心意欲点も生徒の取り組み方(課した問題以上にたくさん解く、探究学習をしている様子が見られたら自動的に加点など)や、授業中の様子も取り組み状況やAIカメラを通じて自動的に判断することで、主観性を排除して公平に成績を付けることができます。
先生が日々生徒ごとのよかったところやよくない行動などをメモしておくことで、先生からのコメント欄も自動生成。最後に確認をするだけで終了。学期末の行事で忙しい時でも事務作業は簡単に終えることができます。
夢物語2:生徒のわかりづらいところを察知するAI
先生の話を聞いても全然わからない
先生が説明して問題を解く時間。でも説明が全く分からなかったので、問題も手が付けられない。みんながすらすらと解いている中で、席を立って先生に聞きに行くのも嫌だなあ。そんなことを考えてしまう生徒は実は多いです。そうして流すことが習慣化されてしまうと、ついには学習を放棄してしまうことも稀ではありません。
わからない顔をAIが察知して先生に知らせる
先生は見えているようで、全員の様子は同時に把握しきれません。そこでAIが先生の目となり、耳となり、理解度が低い生徒を見つけて個人的にサポートすることができます。先生がサポートするだけでなく、AIが視線や手の動きなどからわからないところを推測し、説明もしてくれます。
問題を解くのが教科書やノートではなく、すべてタブレットやPCにすることで、授業時間中はその端末についているカメラが常に生徒の表情をAIが捉え、感情を読み取り、先生に「わからない」ことの意志を自動的に伝えたり、AIが先生の代わりとなりアドバイスを行ったりすることもできるでしょう。
先生は生徒の長所や短所をだいたい把握できていますが、実は意外なミスや苦手分野などには気が付けないことが多く、後からテストや保護者の方からのお話で知ることもあります。
少人数教育を行う科目や私立学校も増えてきていますが、教員不足のなか、多くの学校でその状況を作り出すのは簡単ではありません。そのため、先生の五感を助けるAIが生徒をサポートします。
夢物語で終わらせないために
上記は現状の教育現場での問題点や、教育現場を囲む行政や日々進化する技術を鑑みて、「こうあったらいいな」という夢物語を考えてみました。 AIは比較的新しい技術であるため、いまだ多くの問題点が含まれています。一方、その可能性は青天井と言えるでしょう。利用者であるわれわれが、日々利用しながら、夢想し、実行していくことで、拓くことのできる活用方法も生まれてくるでしょう。夢物語で終わらせないためには、まずは使ってみる、そして上手に/安全に使える方法を身をもって体験することが最初の一歩です。
さいごに
最後までご覧いただきありがとうございました。あくまでもこのコラムは「夢物語シリーズ」と題し、すでに実現している可能性もある中で、AIがこのように使われる可能性もあるのではないかということを、現在の社会状況や筆者の体験をもとにAIの活用策を考えています。
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夢物語かもしれないと感じていることも、実は今の技術ですでにできるようになっているかもしれません。
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